【DO!BOOK・ページリンク】
csrreport2009   41 / 42

BOOKをみる

10秒後にBOOKのページに移動します


東亞合成グループ CSR報告書 2009 41 1. 情報開示について  東亞合成グループの情報開示姿勢はきわめて積極的 で、2001年に初めて環境報告書を発行して以来、継 続的に報告書の質と量を改善しており、情報開示面で のPDCAがよく機能している様子がうかがわれます。  発行当初の環境報告書は、2006年には環境・社会 活動報告書へ、また、その2年後にはCSR報告書へと 進化しました。しかし、社会的取り組みに関する情報 は、すでに環境報告書時代の2004年から開示が始 まっています。それ以降、労働力分布(2004年)、 育児休業適用件数(2005年)、介護休業適用件数 (2006年)、障害者雇用率(2007年)、定年後再雇用 者数(2008年)と毎年新しい定量的データが追加され ており、継続的に5〜6年の時系列データが提供されて いる環境情報の場合でも、次年度目標値(2004年)、 廃棄物フロー(2005年)、グループデータ(2008年) などのデータ追加が行われています。  また、2001年に初めて登場した労災関連情報は、 22年間という他社に例を見ない長期間の時系列デー タになっており、2004年に本格的な開示が始まった 後も、13年間(2004年)〜16年間(2007年)にわ たる長期間データが提供されていました。こうした過 年度の贅沢な情報のせいで、8年間(2008年)、5 年間(2009年)という最近の開示例における時間ス ケールが、むしろ短く感じられてしまうほどです。  2008年度版から、編集方針には「前年度からの改 善点」が記載されています。2009年度版では記載箇 所も注記されるようになり、RC活動の総括情報と共 に、読者の利便性に配慮した丁寧な記述として印象に 残りました。 2. CSR意識調査について  2009年度から新たに始まった取り組みに、グルー プ規模での社員を対象としたCSR意識調査がありま す。この調査は、その結果よりも調査を実施しようと する姿勢そのものに意義があるのだろうと思います。 というのも、調査自体が組織の自己点検になっている からです。自らの組織的理解度を明らかにしようとす る取り組み姿勢は高く評価できます。  ただし、CSR報告書では概要が示されているだけな ので、アンケート内容に関する詳しい説明や調査結果 がどのように組織的な教育・訓練にフィードバックさ れたのかについてのフォローアップ情報があれば、情 報の信頼性向上に役立つと思われます。  また、現在でもグリーン調達やサプライチェーンに 対するCSR方針の伝達・共有が行われているので、今 後CSR意識調査をサプライチェーン全体に展開でき るようになれば、さらに有用な情報が得られるのでは ないでしょうか。 3. ステークホルダーに対する対応について  東亞合成グループのCSRマネジメントは、ステーク ホルダーに対する対応のきめ細かさに特徴があります。  たとえば、顧客関連では、アロンアルフア等の接着 剤に関する問い合わせ対応が目を引きますし、社員関 連では、フレックス・裁量労働制、メンタルヘルスケ ア、自己申告・社内人材公募制といった多様な労務環 境の整備方策や、経営協議会のような労使における経 営課題の共有体制が大きな評価ポイントになっていま す。また、地域社会に対しても事故・苦情情報のよう な情報提供上の細かい配慮が見られます。 4. サイトレポートについて  2002年〜2007年までは、非常に詳細なサイトレ ポートが収録されていました。ところが、CSR報告書へ の転換に伴って、2008年にはその記述が簡素になり、 2009年からはサイトレポート自体が廃止されました。  しかし、定量的データの開示は報告書全体の信頼性 を高めます。2008年並の開示スペースでも、重要な サイト別のCSR課題や気候変動関連のKPI(主要な業 績評価指標)なら、一部記載が可能だと思われます。 2006年を最後に記載されなくなった環境データの次 年度目標値と同様に、廃止が惜しまれる情報です。 第三者意見 上智大学 経済学部 教授 上妻 義直