【DO!BOOK・ページリンク】
csr2012   49 / 50

BOOKをみる

10秒後にBOOKのページに移動します


東亞合成グループ CSR報告書 2012 49 第三者意見 1. 研究開発拠点のCSR貢献 現在の中期経営計画である“ALL TOA 2013”では、成 長戦略の一つに「新製品、新事業の創出」を、また経営施 策の一つに「CSRの深化」を掲げていますが、2011年は、 これらの融合を大きく前進させる二つの取り組みがスタート しました。それは、東亞合成の「R&D総合センター」とア ロン化成の「ものづくりセンター」です。これらの近接した 研究開発拠点の新設によって、本業でCSRを推進する組 織体制が着実に整備されつつあるように思います。 社会全体で効率的に課題を解決するために、近年では CSRマネジメントの範囲を拡大し、バリューチェーン全体を 管理することが要請されています。とくに、その川下では、 使用段階での負荷低減やCSR課題解決の視点から、環境 配慮製品や社会貢献製品が注目を集めており、CSRは単 なるリスク要因ではなく、事業活動に新たな収益源をもた らすチャンス要因としても認識されるようになりました。 現在でも数多くの環境配慮製品や障がい者支援製品等 を提供する東亞合成グループですが、これら二つの研究開 発拠点によって、今後CSR活動と事業の成長がさらに連動 して加速されるものと期待されます。 2. BCP/BCM体制の進化 東亞合成グループのBCP/BCM体制はこれまでも整備 が進められてきました。しかし、東日本大震災の教訓を得 たことでリスク管理全体に対する考え方が大きく変化し、リ スク管理体制の再構築の中でより実効的なBCP/BCM体 制への進化が図られています。 とくに印象的なのは、その対応の迅速さです。原発事故 の影響で操業停止を余儀なくされた工場を3ヶ月余りで再 開させただけでなく、震災で明らかになったBCPの脆弱性 に対して次々と対応策が講じられており、BCMの意識が日 常的に強く働いていることがよくわかります。 3. ノー残業デーの拡大 労務管理面での評価ポイントはノー残業デーの拡大で す。これまで月2回の水曜日に実施していたノー残業デー が毎週適用へと拡大され、さらに休日出勤が原則禁止とな りました。過重労働防止およびワーク・ライフ・バランス への配慮策として、思い切った施策を講じている点を高く 評価したいと思います。 ただ、全体的な業務の効率化が図られなければ、こうし た制度も残業時間の短縮には結びつかないので、従業員 の方々からのフィードバックを勘案しながら継続的に制度の 運用状況を監視し、問題があれば迅速に改善できる体制を 整えておくことが望まれます。 4. CSRマネジメント体制の課題 東亞合成グループのCSRマネジメントはPDCAを着実に 回すことが基本であり、「CSR目標と取り組み状況」に関す る要約表によって、目標・実績・自己評価がコンパクトに開 示されています。また、課題ごとの取り組み状況はいずれ も1〜2頁にまとめられており、要約表と連動しながら、読 者がPDCAの状況を理解するのを助けています。 しかし、こうしたわかりやすさのおかげで、PDCAがうま く機能していないと思われる事項が余計にクローズアップ されてしまいます。これは昨年も指摘したことですが、目 標達成できなかった項目(×項目)がかなりあり、そのいくつ かは継続的に改善が滞っている印象を受けるのです。 たとえば、「休業災害ゼロ」は2008年以降5年間連続で 「×」であり、「重大事故ゼロ」は2009年から目標未達成 です。また、「クレーム発生件数」も2009年目標から連 続して「×」評価で、2011年から温暖化防止指標となった CO.排出量も目標達成できていません。 こうした事態を解消するためにどのような計画があるの かは詳しい情報がないのでわかりませんが、今後状況を効 率的に改善するためには、目標設定を含めたPDCAのあり 方自体を見直す時期に来ているように思います。 上智大学経済学部教授 上妻 義直